なぜわかったのかと言えば、半分は雰囲気の違いのせい。
そしてもう半分は、彼が左手に持っているものを見たから。


「これで東京に行けるぞ」


2枚の一万円札をひらひらさせながら、ホタルが得意げに言った。


「どうしたの!? そのお金」


まさかほんとにカツアゲしたんじゃ、と不安になりながら駆け寄る。
だけど返ってきたのは意外な答えだった。


「おとしだまだ」

「……お年玉? あっ、もしかして蒼ちゃんの?」


一瞬の間を置いて、ああ、とホタルがうなずいた。

なるほど、その手があったのか。
褒められた方法ではないけれど、カツアゲの類よりは数百倍マシだろう。

だけどあくまでもマシなだけであって、ベストというわけではない。
道徳的には黒に限りなく近いグレー。

いくら父親探しが蒼ちゃん自身にも関わることとは言え……。


「ねえ、一応聞くけど、これって蒼ちゃんの許可無しだよね?」

「当然だろ。あいつの承諾を得るってことは、僕の存在を教えるってことだぞ」


たしかに。