ホタルは眉間にしわを寄せ、デスクに手をついて立ち上がった。


「何か勘違いしてないか? お前に話したのは嗅ぎ回られるのがウザいからだ。別に手伝ってほしくなんか」

「わかってる。別にあんたのためじゃないよっ」


そうだ、断じてホタルのためなんかじゃない。蒼ちゃんのため。

早くホタルの目的が達成できれば、その分、蒼ちゃんの中からホタルが消えるのも早くなる。
だから協力すると言ったんだ。


「どっちにしろ他人のためだろ」


イラついたように言い捨てて、ホタルが背を向け歩き出した。

どうやらわたしは空回りしてしまったらしい。
そりゃあ、わたしなんて何の役にも立たないだろうけど。

なにしろ家族にすら“いらない荷物”と言われるくらいなんだから……。

少なからず落ちこんでいると、ふいにホタルの足音が止まった。


「おい、そこのおせっかい」


反射的に顔を上げる。
するとホタルは、相変わらず背中を向けたまま、


「足を引っぱったら、即クビにするからな」


憎たらしい口調でそう言った。



     * * *