「心臓がっ‥‥止まるかと思っただろ!」

「ごめ‥‥‥」

「何が“ごめん”だ! そんなこと言うな!」


わたしを抱く腕に、さらに力がこもる。


「俺が教室で初めてお前を見つけたとき、どんな気持ちだったかわかるか!?
‥‥‥抱きしめたかったんだ! 葉月が本当に生きてたって、嬉しくて、涙が出るくらい嬉しくてっ‥‥‥!」


言葉と言葉の間に、鼻をすする音が聞こえる。

わたしの胸にも熱いものがこみ上げて、喉の奥が震えた。


「‥‥‥タイショー‥‥‥」


わたしが呼ぶと、彼は腕をほどいて、至近距離で顔を向かい合わせた。

目も鼻も真っ赤なタイショーと、たぶん今、わたしは同じ顔をしている。


ごめんね‥‥‥。またそう言いそうになって、ちがう、と思った。

わたしが言いたかったこと、伝えなきゃいけないことは、ほかにあるはず。



「ずっと‥‥‥好きだったよ」



あぁ、そうだ。これだったんだ。

とてもシンプルで簡単なのに、口にできなくて、見失って。

ぐちゃぐちゃに散らかったあの部屋で、埋もれていたんだね。