病室には、彼のほかに誰もいない。
タイショー‥‥‥わたしが眠っている間、ひとりでお見舞いに来てくれていたの?
そんな風に何度もあやまって、くしゃくしゃの顔で泣きじゃくって‥‥‥。
彼に手を伸ばそうとするけど、できなくて、ふっと光景がかすんだ。そして、また新たに浮かびだす。
あぁ、こんどは私服のタイショーだ。休日かな。わたしは、まだ眠ってる。
『葉月、ごめん』
あなたは何度そうやって、反応のないわたしに謝罪し続けたの?
『ごめんな、俺がズルかったんだ‥‥‥。お前の気持ちに気づいてたくせに、ミホの妹だからって甘く考えてた』
ううん。妹という立場を利用していたのは、わたしの方。
『ミホとうまくいかなくてイライラしてたとき、俺になついてくれるお前が、可愛くて仕方なかった。
だからお前に、無意識に気をもたすようなことして‥‥‥本当に、ごめん』
泣かないで。あやまらないで。
あなたの痛みが、わたしも痛い。
ごめんね、タイショー。
いっぱい泣かせて、ごめんね。
お気に入りの原付、ペシャンコにしちゃって、ごめんね。
あなたの青春時代に影を落として、ごめんね。
何ひとつ、まともな向き合い方ができなくて、ごめんね。