あのときと同じだった。
背後から響く、タイショーの叫び声。
まぶしすぎるライト。
白い世界に吸いこまれていく意識―――‥‥
そして、わたしは不思議な光景を見た。
『ごめんな‥‥‥本当に、ごめんな』
‥‥‥誰?
どこかで、誰かの泣いている声がする。
『葉月、ごめん‥‥‥』
わたしの名前を呼ぶ、男の子の声。
この声は‥‥‥タイショー?
あぁ、わかった。今より若い頃のタイショーだ。
白い世界に、うっすらと景色が浮かんでくる。
ここは‥‥‥病室?
天井と、たくさんの管や機械が見える。
そして、すぐそばで泣いているのは、制服姿のタイショー。
これは‥‥‥わたしが眠っていた間の記憶?
『葉月、ごめん。頼むから、目を覚まして‥‥‥』
ふわふわの茶色い髪。なつかしい、高校時代の彼。
『ごめんな。俺が、原付のキーを着けっぱなしにしてたから』
タイショー。そんなに泣かないで。
『ごめんな。俺が、お前をたぶらかすようなことをしたから』
ちがうよ、わたしがそう願ったんだよ。
『ごめん。本当にごめん‥‥‥』