見ると、駐車場の出入り口のあたりに、息を切らしたタイショーが立っていた。
「勘弁してくれよ。何してんだ、お前」
「‥‥‥ぬすんだバイクで走り出してた」
「笑えねーよ」
うん、わたしも笑えない。笑えないし、泣けない。寂しさを伝えることも、勇気を出すことも、できない。
わたしはすっかり弱虫になって、あなたの前でどうすればいいのか、もうわからない。
「帰るぞ」
タイショーの言葉に、わたしは首を横にふった。
「まだ、ここにいる」
「風邪ひくだろ」
「‥‥‥映画」
「は?」
わたしは建物を指さして言った。
「映画、観ようよ。ね、タイショー」
そうだ、それがいい。ふたりで映画を観よう。メッタメタのギッタギタに、悪者をやっつけるやつ。ポップコーンを食べながら、ど派手なアクションに興奮してさ。
そしたらきっと、今日あった出来事なんて全部忘れられるから‥‥‥。
「ごめん」
タイショーが言った。眉間にしわを寄せ、痛みをこらえるような表情で。
どうして彼がそんな顔をするのか、わたしにはわからなかった。わかりたくなかった。