‥‥‥今さらだけど、とんでもないことをしてしまった。と、後悔にも似た気持ちがじわじわ湧いてくる。

けれど、あの状況でとっさに浮かんだのは、こんなムチャな行動だけだったんだ。

ほかの方法なんて、わたしは知らない。

タイショーと真正面から向き合うことを、最初からあきらめていたのだから。


姉の恋人だったから、今までタイショーに会えていた。
姉の恋人だったから、いつも心がざわざわしていた。

喜びと苦しみの矛盾だらけの関係を、甘んじて受け入れることしかできなかった、ちっぽけなわたし。



空が、だんだん暗くなってきて、ぽつぽつと街灯がつきはじめた。

むらさき色の夕闇の中で、ショッピングセンターのビルだけが煌々と明るい。

わたしは体育座りのひざに顔をのせた。デニムのごわついた生地が、くちびるに触れる。

さっき、タイショーと重なったくちびる‥‥‥。

あれは寝ぼけていたのか、気まぐれだったのか。その真意をたずねるのは、今さらもう無理だな、と思った。


そして立ち上がり、原付のシートに座ったとき、


「こんなとこにいたのか」


ふいに声をかけられた。