「‥‥‥何なんですか?」
震える声でたずねたわたしを、彼女が無表情に見下ろす。
そして、急に不自然なほど、友好的に微笑んだ。
「若いときって、すぐに勘違いしちゃうんだよね。わかるわ」
「どういう意味ですか」
「好きな人にやさしくされたら、バカな期待しちゃうってこと」
遠まわしで、ねっとりとした物言いが、わたしの神経を逆なでする。
「好きな人? それは、平井先生が瀬戸先生を好きってことでしょう?」
心臓はバクバクしながらも、不思議と冷静に立ち向かう自分がいた。
それはきっと、タイショーに対する彼女の想いを見透かしていたから。
そして、見透かされた平井先生は、笑顔の仮面をはずしたように冷たい表情になった。
「調子に乗らないで。彼があなたにやさしくするのは、なんでだと思う?」
平井先生の口調が強くなり、わたしは息をのむ。
「保健室まで運んでくれたのも、純粋にあなたを心配したわけじゃない。
ただの―――罪悪感からよ」