「うん。だから全然心配ないよ。帰ったらピザ食べるし」
「おう、食べろ食べろ」
「しかもLサイズ、チーズ増量」
「ははっ」
「―――瀬戸くん」
声とともに、ベッドを囲っているカーテンが開いた。
タイショーが声の方向を見て、「あ、平井」と言う。
その名前に、わたしの体が固くなった。
「教頭先生が呼んでたよ」
「わかった」
タイショーは立ち上がると、わたしに「ゆっくり休めよ」と言い残し、保健室を出て行った。
残されたのは、わたしと平井先生。
「‥‥‥」
わたしは先生から目をそらすように、壁の方に顔を向けた。彼女は無言のまま、なかなか立ち去る気配がない。
何なの、早く出て行ってよ。
なんで、いつまでもそこに立ってんの。
さっさとカーテンを閉めて出て行ってよ‥‥。
シャッ、とカーテンを引く音が聞こえた。ようやく出て行ったんだと、思った。
けれど、そうではなくて。
閉じたカーテンの内側に、平井先生もいた。
わたしたちは密室にふたりきりになった。