「い、いらない」

ようやく出たのは、可愛くない言葉。

「どうしてだよ」

「寒くないもん」

「風の子か」

「そうだよ」

「すげぇな」

「こんなの、ぜんぜん平気‥‥へっくしゅん!」


強がりの態度は、クシャミという生理現象であっさり崩れてしまう。

そんなわたしのマヌケっぷりに、タイショーが楽しげに肩を震わせた。


「風の子失格じゃん、ハズキング」


‥‥‥やめてよ。そんな意地悪な顔で笑うの、やめてよ。

わたしの心の奥をかき回す、この男は、熱風の竜巻だ。


「ほら、早く着ろって」


タイショーがコートを投げるように渡してくる。
わたしは観念して、おずおずと袖を通した。

彼の体温が残っていて、ほんのり温かい。
ぶかぶかのサイズは、まるで彼に包まれているみたい。