それから、40分ほど経った頃だろうか。


「できたーっ! ‥‥‥あれ?」


漫画を読んでいたはずの彼の方を見ると、いつのまにかベッドの上で寝息をたてていた。


「タイショー」

呼びかけても反応がない。

「‥‥‥‥」


わたしはそろりと立ち上がり、彼の寝顔を上から見下ろした。


驚くほどあどけない、無防備な表情。
薄く開いたくちびるから、真っ白の前歯が2本だけ見える。
かすれた寝息と、それに合わせて上下する胸。

見てはいけないものを見ている気分になって、わたしはタイショーの肩をぞんざいな動作で叩いた。


「ちょっと。人のベッドで寝ないでよ」


んん‥‥‥と鼻から抜ける声がする。


「問題集できたから起きてってば!」

「‥んー‥‥ミホ‥‥‥?」


あいまいな発音で姉の名前を呼んだかと思うと、彼の腕がぬっと伸びてきた。

そして、わたしの腕をつかみ、寝ぼけている人とは思えない力で引き寄せる。

悲鳴をあげる間もなく、わたしの体はタイショーの胸の上に落ちた。