わたしに勉強を教えるという口実があれば、タイショーは姉の帰りをここで待てる。

これは、ふたりが仲直りするための、心優しい妹による配慮なんだ。


そんな風に自分自身にも言い訳をして、わたしは、姉も両親も不在の中、タイショーを自室に招き入れた。


「教科は何?」

「あ、えっと、英語っ」


わたしは勉強机に座り、あわててテキストと問題集を広げた。

タイショーが机の横のベッドに腰かけて、隣から覗きこんでくる。

心拍数が上昇していくのが、自分でもはっきりわかった。

シャーペンを持つ手に力が入る。


「お前、文法もろくに理解してねーだろ」

「し、してるよ」

「だって全然、解けてねぇじゃん」


半分図星だった。ただでさえ苦手な勉強なのに、緊張のせいでよけいに頭が回らないのだ。

タイショーはそんなわたしにあきれながらも、丁寧に解き方を教えてくれた。

あいかわらず教えるのがうまい彼のおかげで、だいぶ理解が進んだ。


「じゃあ次は問題集の、ここからここまでやってみ」


タイショーは5ページ分の問題を解くように命じると、待ち時間をつぶすために、本棚から漫画を取って読み始めた。

わたしは緊張から気をそらすように、目の前の英文に集中した。