「ミホはアクション映画、たしか嫌いだよな。一緒に行くの、嫌がるかもしんねぇぞ」
「わかってるよ」
間髪入れずに答えると、タイショーの表情が静止した。
‥‥‥わかってるよ。
だから、だよ。
にわかに空気が張りつめて、わたしは下を向く。
わたしの小さな賭けに、どんな返事がくるのか怖かった。
鼓動を押し殺すように唇をかんだ、そのとき。
「了解」
頭をポンポンと、なでられた。
驚いて顔を上げると、そこには、包みこむような笑み。
「タイショー‥‥」
電車到着のアナウンスが流れ、彼はするりとわたしから離れた。
そして切符を購入し、改札の前で一度だけふり返った。
「じゃあな。葉月」
心臓に弾丸が撃ちまれたみたいに、息が止まって、声が出なくなる。