唇をとがらせるわたしを、タイショーは楽しそうな目で見おろす。

こんなに間近で見つめられるのは初めてで、ドキドキした。


「じゃあ、特別サービス」

ふいにタイショーが言った。


「もしお前が80点以上とれたら、ご褒美をやるよ」

「マジで!? 何くれんの?」

「何がいい?」


わたしは高速コンピューターのように考えをめぐらせて、答えた。


「映画がいい!」

「映画?」

「うん。隣町のショッピングモールで観たい!」


そのショッピングモールには、姉やタイショーと一緒に行ったことが何度かあった。

別にデートのおじゃま虫をしていたわけではなく、姉の買い物に長時間付き合うのが苦痛なタイショーが、わたしに同行を求めるからだ。

けれど、併設している映画館の方には、まだ行ったことがなかった。


「別にいいけど、なんか観たい映画あんのか?」

「えっとね、アクション映画がいいな。悪者をメッタメタのギッタギタにやっつけるやつ」

「メッタメタのギッタギタ‥‥‥ってジャイアンじゃねーか」


タイショーが笑った。
それから、ふと何かに気づいたように、「でも」と言葉を続けた。