一瞬だけ昔の表情を見せたタイショーは、けれど次の瞬間、“先生”の顔に戻って教室を出ていく。

わたしはそれを目で追いながら、心臓のあたりを手で押さえた。


落ち着け、浮かれるな‥‥‥。
今さら、こんな想いを掘り起こしたところで、どうにもならないじゃん。

わたしたちは今、先生と生徒。しかも、たった2週間限定の。

タイショーが姉の彼氏だったあの頃から、距離はちっとも縮まっていないのだから。


そう自分に言い聞かすけれど、甘い痛みがじわじわ胸に広がっていくのを、感じずにはいられなかった。