「お姉ちゃん、子供生まれるよ」 「え?」 ふりかえった彼のわずかな表情の変化に、胸がざわつく。 「はたちの時に職場結婚したんだ。それで、来月、出産予定」 「そっか」 よかったな、とタイショーが言った。ひどく大人びた微笑で。 「そんで、お前はどうよ。彼氏できたのか?」 「え‥‥‥いないけど」 「早く作れよ」 「‥‥‥」 さっきより速い歩調で校舎へと歩き始めたタイショーに、わたしはもう何も言えなかった。