「いや、俺らがよく会ってたのは、けっこう小さい頃だったから。中学とかの成績は全然知らなかったんだ」


嵐くんが微笑みながら梨花ちゃんに答えている。

雪夜くんと嵐くんはどういう知り合いだったんだろう、と私は少し気になったけれど、梨花ちゃんは「ふうん、そうなんだ」と言ったきり、それ以上深くは訊かなかった。


代わりに梨花ちゃんは、「それにしてもさあ」と空気を変えるように言った。


「嵐と雪夜って本当に賢いんだね。学年順位で一桁とか、雲の上すぎて想像もつかないんだけど」


雪夜くんは何も聞こえなかったかのように平然としていたけれど、嵐くんは「まあね」とおどける。

梨花ちゃんはそんな嵐くんを見ながら、不思議そうに首を傾げた。


「ていうか、二人とも、なんでうちの高校なの? もっと上の学校に行けたんじゃない? 滝川とか、陵明館とか」


梨花ちゃんが名前を挙げたのは、東大や京大に毎年何十人も合格するような、この辺りでトップを争うほど有名な、いわゆる超進学校だ。


この清崎高校は中堅進学校だけれど、清崎の上位の人は難関の国立大学に合格していくらしい。

なので、梨花ちゃんが言うように、二人も学力的には、滝川高校のような難関進学校にも入れたはず。


そのほうが勉強面では良かったのだろうけど、嵐くんはあまり乗り気ではなさそうな表情だ。