それから私たちは毎日、放課後になると教室に残って、雪夜くんにこれまでの授業の内容を教えるようになった。


雪夜くんの第一印象が『不良』だったせいか、失礼な先入観なのだけれど、あまり勉強は得意ではないのかと思っていた。

でも、勉強会を始めてみると、彼は思いのほか理解が早くて、少し教えるだけで要領を得てすらすらと問題が解けてしまう。


だからあまり教える手間はかからなくて、三日目からは、教える側だった私たちもそれぞれの苦手な教科を持ちより、教え合いをするようになっていた。


「なんかさあ、楽しいな」


梨花ちゃんに教えてもらいながら英語の問題集を解いていた嵐くんが、ふとそう呟いた。


同じことを思っていた私も「うん」と頷く。


こういうふうに友達と勉強会などをしたことのなかった私は、まるで小説の世界の中に入ったような気がして、最近いつも浮かれているのだ。

お父さんに「何か良いことでもあったのか?」なんて訊ねられるくらいに。


「そうだね、私も」


と梨花ちゃんが答える。


「みんなで勉強するって、なんか妙に楽しいね。それに、なんていうか、このメンバー、すごく居心地がいいから楽」


だよな、と嵐くんもうなずいている。


それを見て私は意外に思った。

二人ともいつも友達に囲まれているから、こういう機会には恵まれているだろうに。