思いがけない展開にどぎまぎしながらも、私は心の中で、三人の名前を呼ぶ。


梨花ちゃん、嵐くん、そして――雪夜くん。

新しい世界が開けたような気がした。


「おい、雪夜。お前もだぞ?」


三浦くんがにやにや笑いながら遠藤くんに顔を近づけると、遠藤くんは迷惑そうに顔をしかめた。

でも、前髪の隙間から覗く瞳は、意外にも柔らかい色を浮かべている。


「ちゃんと名前で呼ばないと、勉強教えてやらないぞ?」

「……べつに、」

「べつに俺は頼んでないし、とか言うのナシな!」

「……」

「ちゃんとテスト対策しとかないと、赤点とったら面倒だぞ?」

「……わかったよ」


遠藤くんが諦めたように小さく呟いた。


なんだろう。

無口でいつも不機嫌そうな遠藤くんだけれど、三浦くんに対しては少し心を開いているような気がする。


さすが、クラス委員長の三浦くんだな、と私は心のなかで拍手を送った。


「自分で言って思い出したけど、これ、勉強会だったな。そろそろ本題に入るか」


三浦くんが言うと、染川さんが「はあい」と手をあげて、教科書を準備しはじめた。


「ほら、雪夜! ちゃんと用意しろよ。せっかく教えてやるんだから」


遠藤くんは、はいはい、というように肩をすくめて、引き出しから教科書を取り出した。