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翌朝。
いつものように前のドアから教室に入ると、私は無意識に奥へと目を向けた。
窓際の一番うしろの席。
そこは、いつものようにひっそりと静まり返っていた。
教室を横切って、自分の席につく。
本を読みながら、先生がやってきて朝礼が始まるのを待つ。
いつもと同じ朝。
でも、すこし違う。
左側が気になってしかたがないのだ。
私はちらりと隣の席を見て、それから黒板の上の時計を見て時間を確認した。
朝礼の始まりを告げるチャイムが鳴るまで、あと三分。
クラスのほとんど全員がすでに席についていた。
入り口のドアのほうに目を向けたけれど、誰かが入ってくる気配はない。
遠藤くんは、まだ姿を現さない。
もしかして、また不登校に戻ってしまったのかな。
そんなことをぼんやりと考えている自分に気がついて、慌てて視線を本のページに戻した。
もう遠藤くんのことは気にしない、忘れる、と昨日決めたばかりなのに。
私は細く息を吐いて、意識を無理やり本の世界に戻した。