――それなのに、私はどうして今、生きているのか。

私はどうして、雪夜くんを忘れて、生きていたのか。


ベンチに座って項垂れている雪夜くんを見つめる。

彼は今、『俺は、美冬の大事なものを奪ったんだから』と言った。


だからなの?

私から何かを奪ったと思い込んで、死にかけた私の命を…。


「――ねえ、雪夜くん。あのとき、神様と取り引きをしたんだよね」


雪夜くんがゆっくりと顔を上げて、悲しい笑みを私に向ける。


私は目を閉じて、死を覚悟したあのときに見た光景を、瞼の裏に甦らせた。



幸せだった私たちの毎日が終わりを告げた、最後の日。


私たちを包んだ、美しくて冷たくて優しい、最後の光。