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夏休みはあっという間に終わって、九月になった。
まだまだ暑いけれど、ときどき、空気の中に秋のにおいが混じっている気がする。
ごみ捨てを終えた私は、そんなことを考えながら、さわやかな風の吹き抜ける廊下を歩いていた。
先週始業式があって、授業がさっそく始まっているけれど、校内はどこか浮き足立った雰囲気。
今週末には文化祭があるからだ。
放課後になっても、どこのクラスもたくさんの生徒が残って出し物の準備をしていて、教室の後ろや廊下に段ボールや画用紙や絵の具が溢れ返っていた。
どんな文化祭になるんだろう、と胸を踊らせながら自分のクラスに戻ると、黒板の前に男子数人の人だかりができているのに気がついた。
「ええ? まじかよ!」
「やばいじゃん……」
「本番、四日後だろ? どうすんの?」
顔色や声音から、なにか問題が起こったらしいことは明らかだった。
「なに……なにかあったの?」
彼らの様子を後ろから見ていた梨花ちゃんに声をかける。
彼女は心配そうに眉をひそめて、人だかりの真ん中にいる男子を指で差した。
「高橋くんがね、昨日の部活で怪我して、今日病院でレントゲン撮ったら、左手の指、骨にひびが入ってたんだって……」