どきどきしながらスマホを手に取り、梨花ちゃんの電話番号を押した。


『はーい、もしもし、美冬?』

「あ、うん。ごめんね梨花ちゃん、こんな時間に」

『ううん、全然。どうしたの? 電話なんて珍しいよね』

「うん……あのね、今日、海に行くって話、してたでしょ?」

『うん』

「それってね、やっぱり……水着?」


一瞬、沈黙が流れる。

梨花ちゃんがぽかんとした顔をしているのが目に浮かんだ。


『そりゃそうでしょ、海なんだから水着じゃないと、濡れちゃうもん。普通の服で泳いだら溺れちゃうよ?』

「……だよ、ね……」


思わず黙り込むと、しばらくしてから梨花ちゃんの『もしかして』という声が聞こえてきた。


『美冬、水着持ってないとか?』

「うん……学校のプール用の水着はあるけど、変だよね」

『スクール水着? それは、うん、あれだね』

「だよね。あの、だから、今回は私は遠慮しようかなって……」


そう言った途端、梨花ちゃんが『えっ?』と驚いた声を上げた。


『ちょっと待ってよ、美冬。そんな、水着ないってだけで行かないなんて……美冬がいないと寂しいよ。ねえ、お父さんにお願いして買ってもらったら?』

「うん、それはそうだよね。私も海には行きたいし。でも……そもそも、水着で行くって思ってなかったから、恥ずかしくて……」