「ねえ、みんなで海に行かない?」


梨花ちゃんがそんなことを言い出したのは、明日から夏休みが始まる、という終業式の日の午後だった。

私たちはいつもの四人で連れ立って駅前の商店街に行き、ファストフード店でお昼ご飯を食べていた。


「は? なんだよ、唐突に」


嵐くんがチーズバーガーにかぶりつきながら眉を上げて訊ね返すと、梨花ちゃんが答える。


「だって、夏だよ? 高校生の夏休みだよ? なんか特別なことしたいじゃん」

「はあ、まあな」

「でしょ? で、夏といったら海! 不思議調べも一段落ついたことだし、遊びに行こうよ」


梨花ちゃんのわくわくした顔を見ていると、なんだか私も楽しみになってきた。


「ほら、美冬も行きたそうな顔してるし」


梨花ちゃんにぴっと指を差されて、そんなに分かりやすかったかな、と恥ずかしくなる。

でも、私は今まで、休日や夏休みに一緒に出かけるような親しい友達がいなかったから、誘われただけで嬉しかったのだ。


「まあ、美冬が行きたいなら、行くか」


嵐くんがそう言うと、梨花ちゃんが唇を尖らせ、「私はどうでもいいってこと?」といじける。

すると嵐くんはおかしそうに笑って、「ばーか」と梨花ちゃんの額を指で弾いた。


そんな二人の様子を見ていて、仲が良いなあ、と思う。


もしかして、いい感じなのかな。

二人が付き合ったりしたら、すごくお似合いだし、私まで嬉しくなる気がする。