嵐くんが「どうしたんだよ?」と不思議そうに言って、雪夜くんの肩をつかんだ。

雪夜くんは半分だけ振り向く。


「ちょっと待ってよ、雪夜。いきなり何なの? いいじゃん、面白そうな話じゃないの」


梨花ちゃんが少し不満げに声をあげた。

それに対して雪夜くんは「そうか?」と首をひねってみせる。


「願いが叶う、だなんて、うさんくさい。どうせただの作り話だろ。そもそも、そんなこと本当かどうか確かめようもないのに、調べるも何もないじゃないか」


梨花ちゃんはむっとしたように眉を上げた。

せっかく見つけてきた不思議話を無下にされたのだから、当然の反応だと思う。

私ははらはらしながら成り行きを見守るしかない自分に嫌気が差した。


「なによ、それ。私たちが集めてるのは七不思議でしょ? 何にしたって本当かどうか確かめようがないのは一緒じゃない。面白ければいいんじゃないの?」


梨花ちゃんに詰め寄られて、雪夜くんは言葉につまった。

間を取り成すように嵐くんが入ってくる。


「まあ、確かめようがないってのは本当だけど、インタビューとかしてみればいいじゃん。その話を誰かに聞いたとか、十字架に祈ったら願いが叶った、とか言う人がいたら、そういうのまとめてれば展示できるし」


梨花ちゃんは「そうだよね」と頷き、雪夜くんはむすっとして横を向いた。


「……それでいいだろ? 雪夜」


嵐くんが雪夜くんの顔を覗きこむと、雪夜くんは「まあ、いいけど」と頷いた。