中学になってバレー部に入ったのも、美和子に誘われたからだった。

 自分に運動神経がないことをわかっていたから最初は戸惑ったけれど、一緒にバレーをするのは楽しかった。


「茉莉、一緒に練習しよう」
「ごめんね、ヘタで」
「なに言ってるの? そんなの関係ないじゃない」


 いつもそんなふうに言ってくれて、私と続かないラリーだって根気よく付き合ってくれた。美和子がいなかったら私は手にボールを当てることすらできなかっただろう。

 私と違ってたくさんの友だちがいた美和子が、どうして私とこうして仲よくしてくれているのか、ずっと不思議だった。

 その不思議が、不安になったのは、いつごろだろう。


「来年は一緒に優勝しようね!」


 中学二年の県大会の決勝で負けたとき、美和子がそう言ってくれた。


「頑張ろうね!」


 そう言って私の手を握ってくれたけれど、私はもちろん三年になってもレギュラー入りどころか補欠にさえ入れなくて、練習時間もほとんど玉拾いだった。コートで美和子はたくさんのメンバーの中でひときわ動き声を出し、笑顔を見せていた。


「茉莉、応援しててね」


 その言葉は、もう、一緒にという意味を含んではいなかった。頑張ろう、ではなかった。頑張っているのは美和子だけだった。

 だから、私は高校でバレー部に入ろうとはしなかったんだろう。勉強を理由に断ったとき、美和子は少し残念そうな顔をしたけれど、すぐに笑顔で「そっか」と納得して「高校でも頑張るから、応援してね」って、言ったんだ。

 人付き合いがそんなに上手じゃない私にとって、美和子はとても大切な存在だった。

 うまく人と話せなくて、愛想もあまりよくないし、気の利いた返事もできない私は、今まで美和子に甘えていたんだってことに気付かされたんだよ。

 高校に入って、美和子と同じクラスになったホッとしたけれど、そんな私じゃダメなんだと思ったから、精一杯いろんな人と話すように心がけていた。


 それが、結果的にただ、都合のいい人になっただけだったとしても。


 掃除当番を押し付けられたり、面倒な委員会を代わってあげたり。席替えのくじ引きでは何度か前の席の子に交換もした。


「茉莉、嫌だったら言えばいいのに」
「大丈夫だよ、気にしてないから」


 私がそんなことをする度に、美和子は自分のことのように怒ってくれて、私にも何度か怒った。


「そんなことする必要ないのになんで代わるの?」
「……困ってるみたいだし」
「そんなのウソに決まってるでしょ!」


 わかってても、そのくらいのことをしなくちゃ、私には友達ができないんだ。美和子みたいに、お姉ちゃんみたいに、私は人にかわいがられるタイプじゃないから。

 そんなこと言ったら美和子はまた怒るだろうから、言わなかったけれど。