色とりどりの可愛らしい自分のお弁当をつまみながら、これを作るのってどうするんだろうと考えてみるけれど全くわからない。
料理ができるようになったら、私、認めてもらえるのかな。
キュウリの入ったサラダから、ちょこちょことそれを抜いて端に寄せる。切り刻んだしそを丁寧に取り除いてミニパスタを口に運ぶ。
私が作ることになったら、きっとこのふたつの食材は使わないだろうな、なんて思った。
「嫌いなの?」
「……ああ、うん。苦手なの」
「そんなちまちましたもんまで避けるなら、入れてもらわなきゃいいだろ。親に言えよ」
親に……言ったこと、あったっけ。
言ったら、お母さんは私のお弁当からこのふたつは入れなくなるんだろうか。でも、お弁当はお父さんの分も、大学に通うお姉ちゃんのぶんも作っていて、私のためだけに、それを除いてもらうなんて、きっとできない。そんなの手間になってしまう。
「無理だよ。そんなの、言っても……」
「ああ、わかった」
「……なに、が?」
口をもぐもぐと動かしながら、壱くんが納得したかのような声を出して私を箸で指した。
「お前、頑張るのが下手くそなんだ」
ザアッと、波のような風が吹き抜ける。
「人の言葉考えて喋るの、癖なのか? だからお前の返事イライラするんだよな。人に興味ねえし、どーだっていいけど、お前と喋るとすげえ面倒くせえ」
さっきの謝罪はなんだったんだ、と突っ込みたくなるほど明け透けな物言いに、思わず苦笑がこぼれた。言い過ぎ度合いなら今のほうがよっぽどだと思う。
けれど、さっきほど悔しく思わないのは、私が、色々思い出してきてしまったからかもしれない。美和子のことも、お母さんのことも、そして、お姉ちゃんのことも。
「なんで頑張ってんの? もういいだろ、諦めろよ」
「……っそんなの、できないよ」
「頑張んなくていいじゃん、頑張ってるからそんなややこしいことなってんだろ。意味がないどころか、悪化させてるだけだろ、それ」
「やめ、てよ!」
それ以上言わないで!
彼の言葉を遮るように叫ぶと、あたりは突然シンと静まり返った。
お箸を持つ手に力が篭っていて、それが握りこぶしになってしまっていた。口の中にじわりと鉄の味が広がって、また唇を噛みすぎたんだと気づく。
この、今でさえも否定するようなことを、言わないで。
「記憶消してまで逃げたくせに」
「うるさいっ!」
耳を塞いで叫ぶと、手元のお弁当が地面にガシャンと落ちた。