「あなたには関係あったでしょう。私生活がずいぶん変わった」


「お互いね」


私の挑戦的な視線を受けても、葦原くんはひるまない。どころか、絶対に会社で見せないような悪い男の微笑みを見せる。


「明日を過ぎたら、俺の切り札は効果半減。……気付いてます?」


「え?」


何を言いたいのだろう。
私はいぶかしく彼を見上げる。


「鎌田部長が無事に結婚の運びになったら、あなたとの噂を流したところで今更でしょう。スキャンダルは婚約時代の方が、破局効果高いですからね」


「でも、葦原くんは私の嫌な写真を持ってるじゃない。充分、切り札になると思うけど」


私は憎々しげに微笑んで反論する。


「鎌田部長を人質に取るのと、あなた自身を人質に取るの。どっちが有効かなんて明らかですよ。沙都子さんは自分が痛い想いをする分にはどっちでもいいと思ってる。会社を辞めればいいくらいに考えてる。だから、あなたの写真はたいした人質にはならない」