葦原くんに強引に抱かれることが、心では嫌なのだ。一方で、回数を重ねる毎に、肌は馴染んでいく。

彼のキスの仕方に合わせ唇を開く私がいる。彼の律動に合わせ動くことを覚えた。
達するという感覚も、何度か味わった。
どうすれば、彼とともに高みに昇れるかもわかり始めている。

『沙都子さん』

彼の呼ぶ声で身体が震える。
それだけで、全身の力が抜け、彼にすべてをゆだねたくなる私がいる。

快楽は罪深い。
私の身体を蝕み、どんどん堕落させていく。

心では死ぬほど彼を嫌悪しているのに。
時々、自分が汚らわしくてどうしようもなくなる。




その日の朝は、電車が遅れた関係で、珍しく出社が遅くなった。普段は早くオフィスに到着するので、同僚とはほとんど会わない。

結果、朝から最悪な事態。
エレベーターホールで葦原くんと会ってしまった。

彼の顔を見て、まずはいつも不快感がよぎる。