笠井さんがゆるふわのミルクティー色のロングヘアを揺すって、違う違うとアピール。
アピールしているのが自分の可愛らしさだということは、同性から見ると明らかだけど、それはそれで彼女の戦略なのだろう。


「葦原くんってホント仕事できる!私、結構おっちょこちょいだから、いつもめっちゃ助けられてるよぉ!」


横から仲の良い同期や後輩の女子たちが、やいのやいのと口を挟む。


「笠井、今度葦原くんに御礼しなきゃね。ごはんとか、おごらなきゃじゃない?」


「葦原くん、よかったねー!笠井さんのおごりだってさー」


「やだもう!みんな勝手に決めないで~」


笠井さんが照れて、女子仲間をバンバン叩く。

割とよくある光景なので、別に気にもしていなかったけれど、今日は少し違った。

彼がどんな答えを出すかちょっとだけ興味がある。
別に身体を繋いだ相手だから、気になるんじゃない。被った猫が如何にひどいものだか、観察してやろうという意地悪な気持ちだ。

私が聞き耳をたてているとは知らない葦原くんは、穏やかに微笑んで答える。