昼食はいつもお弁当を作ってきてデスクで食べる。
今日は気力がなく、サンドイッチを買ってきた。食べる機会はなくなってしまった。

私は今、葦原くんの後ろを歩いている。
ビルの隙間の空は高く、私の気持ちとは正反対に美しく晴れわたっていた。
今年は秋の訪れが早く、9月の空に夏の名残は見られない。


「ここにしましょうか」


葦原くんがふと振り向いて、言った。
喫茶店のようなイタリアンは、初めて来たお店だった。
オフィスから出て、駅の反対側まで来たのは、同僚に見られないようにという配慮だろうか。


「パスタでいいですか?」


「私、……おなか空いてないから、葦原くんの食べたいものにして」


葦原くんは答えず、さっさとドアを開けた。