本当に私にしか聞こえない声量で言う。
私は答えない。

土曜は葦原くんが眠りに落ちている間に部屋を出た。タクシー代を抜き、残りの3万円を宿泊費の足しにとテーブルに置き、ひとり帰った。


「お金は、あとで返しますね。それと、これ」


続々と出社してくる同僚たちには絶妙に見えない角度で、私の前にスマホの画面を見せてくる。


息を飲んだ。
そこに映っている画像は……私だ。

とろんとした虚ろな表情で、彼を受け入れている真っ最中の私が写真におさめられている。



「九重さん、この件でお昼休み、いいですか?」


「……ええ」


答えた声はかさかさにかすれていた。