口腔をまさぐるようにうごめく。きつく舌と舌を絡められ息が詰まった。口の端から唾液が溢れそうになる。それすら、葦原くんに舐め取られてしまう。

やはり、さっきのキスは“本物”じゃなかったのだ。
こっちが本当の性行為につながるキス。

決めたはずの覚悟が揺らぐのは、他人とこれほどまでに触れ合ったのが初めてだから。

空想していたキスとは行為の重みがまったく違った。
葦原くんの舌の感触、唇の温度、吐息。ぶつかる鼻や頬。


困惑は徐々に恐怖に浸食されていく。
怖い、蹂躙されていくのがわかる。


やがて葦原くんが私の身体を近くのベッドに横たえた。乱暴ではないけれど、恋人に対する優しさや思いやりは到底感じられない。

真上から見下ろされ、とうとう逃げ場がなくなったと感じる。

今更、迷うな。
さっさと終わらせてもらおう。

私の唇を味わいながら、葦原くんは器用にブラウスのボタンを外していく。キャミソールを引き上げられ、ブラジャーが露わになった。
何の遠慮もなく、ブラジャーもずり上げられる。
裸の胸を人前にさらし、私は肌が粟立つのを感じた。