「お父さん、これつけて」


私はお父さんに命令する。
お父さんは再び私をひざに乗せ、ネックレスの金具を留めてくれた。


「今夜、お母さんに指輪を渡すチャンス、私が作ってあげるよ」


「えー?またまた、大人なこと言い出すね、清子。お父さん、びっくりした」


まばらにひげの浮いたお父さんのほっぺたをぐにーって引っ張って、私はちょっと大きな声で言ってやる。


「そろそろ、お父さんって隠さずに呼びたいんだから、頑張ってよね!」


お父さんは相変わらず困った顔で笑っていたけど、ちゃんと頷いてくれた。


「ありがとう、清子。……よし、ところで質問なんだけど、カレーって最近食べたかい?」


お父さんの話が大きくそれて、私は変な顔をした。
いきなりカレーの話?わけわかんない。


「食べてないけど、話飛びすぎじゃない?」


「いやいや、清子と夕飯でも作ったら、お母さんという難攻不落な美人を攻略できるかなと思いまして。協力してくれないかな?」


本当にダサいな、お父さん。
そこでカレーをチョイスするあたりが素人くさくて最高だよ。