お父さんは別なポケットから小さな箱を取り出す。
中にはキラキラ光る、私の想像通りのダイヤモンドの指輪。


「お母さんにはさ、何度もこれを出してプロポーズしてるんだけど、受け取ってもらえない」


「はー、そうだったの?」


「……昔々、お父さんはお母さんをすごく傷つけてた時期があるから。自業自得なんだよ」


お父さんが困った顔でへらっと笑う。
ダサッ。
お父さんダサいなぁ。

保育園の先生も、クラスのユナちゃんとミアちゃんも、うちのお父さんを見かけて、すっごくカッコいいって言ってた。
だけど、実物はすんごくダサいよ。
お母さんに何年プロポーズ断られ続けてんのよ。
『男なら時に強引に引っ張ってくれるべきだ』って、お母さんのお友達の佐賀さんが言ってたよ?



でもさ、私は知ってる。

お母さんがどれだけお父さんを愛してるか。

お父さんが帰国するのをどれだけ待ってるか。

お父さんと笑い合っているお母さんがどれほど綺麗か。