未來おばちゃんに『本当のこと』を聞いたのは去年だ。

『なんで、お母さんはお父さんと結婚しないの?』

そう聞いた私に、未來おばちゃんは困ったように笑ったっけ。

『沙都子はあれで頑固なところがあるからね。清子を育てる責任は自分で全うしたいのよ、きっと』


『全う』ってなんだろ。
聞きそびれちゃったので、微妙にわからないんだけど。

ともかく、難しい大人の事情があるみたい。

お母さんが困るなら、私は何にも聞かないし、言わない。
お父さんはどうせ一年の半分以上は海外だし、家族らしくしようもない。

ただ、ふたりきりの時はちゃんと呼ぶんだ。
“お父さん”って、本当の呼び方で。





「清子、そうだ。これ、受け取ってくれないかな」



不意に言って、思い出したようにスーツケースをひっくり返しだすお父さん。
中からはナゾの布とか、泥がついてそうな靴とかが出てくる。でも、探し物はなかなか出てこない。
っていうかスーツケース、ぐちゃぐちゃ。

はー、だらしな。
これだから男って。

お母さん、なんでお父さんみたいな人を選んだの?
こんな自分の仕事や興味一途で、生活能力低そうな人……。

もっとシャープなイケメンいたでしょうよ。
お母さん、美人なんだから選べたでしょうよ。