ドアにカギを差し込み回す。
ごとんという振動がして、マンションのドアが開いた。
玄関に入って、すぐに気付いたのは隣の物音。
私はものすごく嬉しくなって、ランドセルを玄関に投げ捨て、脱ぎかけたスニーカーに足を突っ込んだ。
廊下に飛び出し、飛び跳ねそうになりながら、マンションのお隣の部屋の前に立つ。
ぴんぽーん。
チャイムを鳴らすと中で足音。
うん、いるいる。
ドアが重たそうに開く。
「清子、お帰り」
「葦原のおじさんもお帰り!!」
私は現れたおじさんと呼ぶには若い男性に飛びついた。
日焼けした腕が私を持ち上げる。私は嬉しくて、その腕をばんばん叩いた。
「帰ってくるなんて聞いてないよー」
降ろしてもらい勝手に靴を脱いで、部屋に上がり込む。
おじさんは頭を掻いて苦笑いだ。
「はは、来週にはまたカンボジアに戻るからさ。一応、お母さんには連絡したんだけどね」