「私の出した結論はこれなの。この子がお腹にいるとわかった瞬間に決めた。私にできうるすべてをかけて、生涯愛し抜こう。この子と、……いつか会えたらその父親を」


葦原くんの愛しい瞳を見つめ、私はあらためて微笑んだ。
全身全霊の愛をこめて。


「あなたが何と言っても、もう、逃げないから。私はここで待ってる。この子とずっと待ってる」


彼の欲を受け止めきれなかった弱い心の私はいない。
彼を止められなかった情けない私はいない。

すべて、受け止める。

いつか、またあなたの心が折れてしまっても、隣で頑丈な添え木になる。その強さを私は手に入れたから。


葦原くんは清子に触れようとして、指先をさまよわせる。しかし、果たせずに拳をぎゅっと握った。


「来週……またカンボジアに戻ります」


「うん」


「半年後に帰国します。……そしたら、清子ちゃんにお土産を持って会いに行ってもいいですか?」


「うん、楽しみにしてる」


葦原くんはうつむき、乱暴に腕で顔をこすった。
溢れた涙を見せたくないのだとわかった。

私は清子を抱き上げ、一歩近づくと彼の頭を引き寄せる。

三人の抱擁はほんの数秒だった。