「シンガポールで、友人の会社に厄介になりました。アジアをあちこち歩いて、くだらないんですけど、自分探しというか……まあ、煩悩を振り払う旅もしてみました」
「煩悩……振り払えた?」
私が思わず笑って問うと、葦原くんは肩をすくめた。
「なんとも言い難いですね」
「NPO法人の代表だなんて驚いた」
「仕事で入ったカンボジアが……あまりにショックで何かするならここでって思ったのが始まりです。俺、中身がチャチいので、月並みな支援しか思いつきませんでした。で、こんな仕事をしてます。立ち上げから3年で貯めた金はだいぶなくなっちゃいましたけどね」
自嘲的に言う彼はとても落ち着いていて、3年の月日と経験が彼を変えたことを感じた。
あの頃の、野心と支配欲にギラギラしていた葦原五弦はいない。
「煩悩というか……悪い癖の、解決策が少しだけ見つかりました」
ぽつんと言う葦原くん。
「他人を踏みつけ、支配せずにはいられないっていう悪いクセ」
「煩悩……振り払えた?」
私が思わず笑って問うと、葦原くんは肩をすくめた。
「なんとも言い難いですね」
「NPO法人の代表だなんて驚いた」
「仕事で入ったカンボジアが……あまりにショックで何かするならここでって思ったのが始まりです。俺、中身がチャチいので、月並みな支援しか思いつきませんでした。で、こんな仕事をしてます。立ち上げから3年で貯めた金はだいぶなくなっちゃいましたけどね」
自嘲的に言う彼はとても落ち着いていて、3年の月日と経験が彼を変えたことを感じた。
あの頃の、野心と支配欲にギラギラしていた葦原五弦はいない。
「煩悩というか……悪い癖の、解決策が少しだけ見つかりました」
ぽつんと言う葦原くん。
「他人を踏みつけ、支配せずにはいられないっていう悪いクセ」