チラシやポスターがべたべた貼られた鉄製のドアを叩くと、ガシャンガシャンとおおよそノックらしくない音が響いた。
「はい、どうぞ」
中から聞こえてきた声は、懐かしいものだった。
当時、聞きたくて聞きたくて堪らなかった声だ。彼が消えてから、しばらく私はこの声を探して街を歩き回った。
ドアを開けると、狭い室内は散らかっていた。
小さな応接セットとファイルのはみ出た書架。積まれた書類と、枯れかけた観葉植物。
その奥のデスクに、こちらを向く形で彼が座っていた。
PCに向かっていたようで、来客の姿が中に入ってからようやく顔を上げる。
葦原五弦は、私の姿を見てずいぶん驚いた顔をした。
「沙都子さん……」
「久しぶり、葦原くん」
私は懐かしいイエローグリーンの瞳を見つめる。
葦原くんは、少し痩せ、やつれた印象だ。
いつもサラサラだった涅色の髪はボサボサに乱れていた。日焼けした肌に、顎には無精ひげ。タバコも吸うらしく、灰皿には吸殻が山になっていた。
洗練されていた彼の見た目の変わりようは劇的だ。
でも、やっぱり私の目には変わらぬ葦原五弦が映っている。
私は嬉しく懐かしく彼の姿を見つめた。
「はい、どうぞ」
中から聞こえてきた声は、懐かしいものだった。
当時、聞きたくて聞きたくて堪らなかった声だ。彼が消えてから、しばらく私はこの声を探して街を歩き回った。
ドアを開けると、狭い室内は散らかっていた。
小さな応接セットとファイルのはみ出た書架。積まれた書類と、枯れかけた観葉植物。
その奥のデスクに、こちらを向く形で彼が座っていた。
PCに向かっていたようで、来客の姿が中に入ってからようやく顔を上げる。
葦原五弦は、私の姿を見てずいぶん驚いた顔をした。
「沙都子さん……」
「久しぶり、葦原くん」
私は懐かしいイエローグリーンの瞳を見つめる。
葦原くんは、少し痩せ、やつれた印象だ。
いつもサラサラだった涅色の髪はボサボサに乱れていた。日焼けした肌に、顎には無精ひげ。タバコも吸うらしく、灰皿には吸殻が山になっていた。
洗練されていた彼の見た目の変わりようは劇的だ。
でも、やっぱり私の目には変わらぬ葦原五弦が映っている。
私は嬉しく懐かしく彼の姿を見つめた。