強引なセックスは、とてつもなく悲しかった。私を征服する彼はなぜか泣いているように見えた。
触れる指先も、押し込まれる身体も。
全部苦しそうで、全部悲しかった。

遮二無二すがりつく彼に対して、私は拒絶をやめた。
そして、精一杯、彼を抱きしめ返した。

私たちの情動は互いを駄目にする。
もう、滅ぼしあうことしかできない。

だけど、……彼が望むならこのまま共にいようか。

狂い、壊れた思考の彼の人形でいてあげようか。

だって、こんなに最低な男を私は愛している。
自分を殺し、彼の猟奇的な支配に迎合すれば、私も幸せになれるだろうか。彼は安心するだろうか。

やがて、葦原くんは私の中で果てた。
ろくに服も脱がずに交わした愛は、乱れた服のようにしわくちゃで見る影もない。

肩で息をしながらソファに転がる彼を、横に座って悲しく見下ろす。

葦原五弦は、これからも私や自分のために、多くの人間を踏みつけていく。

ねえ、あなたが望んでくれるなら、私も付き合うよ。

一緒にその罪を背負うよ。

だから……。





「逃げて……沙都子さん」


それは彼の唇から漏れた。