「黙って聞いていれば」


葦原くんが底冷えのする声でささやいた。
次の瞬間、私はソファに突き飛ばされていた。身を起こす暇もなく、葦原くんの身体がのしかかってくる。
首に両手が添えられた。
ぎゅっと圧迫され、頸部で血流も酸素も遮断される。ひゅうっと喉が鳴った。


「沙都子さん、あなたに意見を主張する権利はないんですよ。思い出させてあげますからね、自分の立場を」


彼は私を殺そうというのではない。圧倒的な力の差を見せつけ、私の戦意を削ごうとしているのだ。

私は手に爪をたて、引きはがした。


「っ……離して!」


「離さない」


葦原くんは私のカットソーをめくりあげ、胸元に噛みついた。
私が悲鳴をあげるのを嬉しそうに微笑んで見つめ、それから容易に私の脚を抱え上げた。


「葦原くん……」


「沙都子さん、俺は、あなたのことが……」


葦原くんは顔を歪め、それ以上は口にしなかった。
言葉にできない代わりに彼は行為に没頭していく。