「なにか問題がありますか?俺はあなたの安寧のために動いたに過ぎない」


「そんなこと頼んでない……」


「あなたの望む望まざるに関わらず、あなたを守る。……そう宣言してあります」


なんて真摯に言うのだろう。
彼と話しているとどちらが正しいのかわからなくなりそうだ。


「葦原くんは自分が仕組んだことで、何人もの人生が変わったって自覚はある?」


私の責める言葉に、葦原くんは心底おかしそうに笑った。声をあげ、邪眼をゆがめ少年のように。


「自覚も何も……俺の生き方は説明したでしょう?俺は他人を踏みつけ、搾取し続け生きています。自分の居心地が悪くなるものは、世界にはいらない」


彼への愛着でしばし忘れていた恐怖がよみがえった。

ここまでのことをする男だったのだ。
頭でわかっていたけれど、実感がなかった。

兄のことは嫌だった。
でも、社会的地位をはく奪し、命まで奪いかねない方法をとられるとは思わなかった。

私を利用したり、嫌ったりする同僚たちまで、不要だと判断すれば処分する。

それは彼という支配者にとって、当然のことなのだ。