私は、彼から離れるべきなのかもしれない。

私がいなくなれば、彼の心は以前に戻るのかもしれない。
強く支配者として生きる彼の理想を全うできるのかもしれない。

彼から離れることを考えながら、あの腕を失ったら死んでしまいそうな自分も感じていた。
私の恋は依存的だ。彼の与える快楽と、心の安息に依存している。
葦原くんのいない世界なんて、きっと耐えられない。


その日、昼休みに私は自分のデスクに戻った。
同じフロアとはいえ、ずっと他部署のデスクが仕事場だった。久しぶりにITマネジメントグループのスペースに戻るとほっとした。
身体が思くて、眠い。

目はつい葦原くんを探してしまう。

彼は出掛けているようで姿が見えない。
残念に感じてしまうなんて、存外、寂しがりやの自分を知る。


「九重、メシまだ?俺、弁当買いに行くけど、おまえの分も買ってくるか?」


与野が声をかけてくる。
ありがたい同期の申し出にのってお願いすることにした。


「ありがと、与野も忙しいところでしょう?悪いね」


「あー、俺と葦原は年末でピークを脱してるから、今は割とヨユーよ?」


「え?」


年末でピークを脱した?