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年末から正月にかけて、私は葦原くんの部屋で過ごした。
一泊だけ箱根に旅行に行ったから、兄への言い訳も嘘ではない。
束の間、私たちは恋人同士のように暮らした。
私の恋心も、彼の支配欲求も消えてはいなかったから、ともすれば私たちの世界は危うくかすんだ。
彼が背を丸め、私から離れて眠る回数は増え、私がひとり涙する回数も増えた。
私たちは楽園の鍵を持っていなかった。
いつか消える仮の安寧の上で、頼りなく手を握り合っていただけ。
束の間の幸福の後、私たちにやってくる終わりを、私はまだ予期していなかった。