「どうしてほしい?どうしたら、葦原くん気持ちいい?」


葦原くんの激しい征服欲求は、私の予想外の攻撃で引っ込んでいるようだ。
いつもの少し意地悪な顔を笑みに歪めて、葦原くんは答える。


「そうだなぁ、たまには名前で呼んでくださいよ」


甘えた声で予想外のことを請われ、胸がきゅっとした。
あらためて、葦原くんのことを好きになっている自分を感じる。
私は濡れた唇を薄く開く。


「五弦……」


「……はは、エロいな。沙都子さんに呼ばれると」


「前から思ってたけど、素敵な名前」


「親父がつけたんですよ。趣味の五弦ベースから……読みづらくて困ってます」


抱き合い、互いの身体にゆるく触れる。
指先で探り合う。
それだけで心地いい。

葦原くんの息が上がっていくのを感じ、私自身もどうしようもなく高揚していることに気づいた。
もっと、もっと彼の熱が欲しい。


「五弦……、五弦……、私は好き、あなたの名前」


好きだなんて言えない。
だけど、少しだけごまかさせて。

今だけ、私のものになって。
私はいつまでもあなたのものだから。

私たちは、バスルームでゆっくりと抱き合った。