私はソファに座り、彼の背を見送った。間もなく、シャワールームからお湯が流れ落ちる音が響き始める。

無性に寂しくなった。

私は、彼に救われている。
兄のことも、未來さんへの気持ちを断ち切った時も。

それなのに、今、彼に苦悩を与えているのは私の存在なのだ。

葦原くんは私に容赦なく接することができなくなっている。
征服すれば、今度は苦しいのだ。

私にできることってなんだろう。

恋を伝えずに、彼にこの気持ちの一端でも伝えたい。
あなたが大事だって伝えたい。

私は立ち上がった。
脱衣所に入り、彼が買ってくれたルームウェアを脱ぎ去る。

下着も取り、シャワールームのドアを思い切り開けた。

その時の葦原くんの顔はちょっと見ものだった。
全裸でシャワーに乱入してきた私を、呆気にとられた様子で見つめ、口は半開きだ。
不意打ちされるとこんな顔になるのかと面白い。


「ど……したんですか?沙都子さん」


「私も、シャワー浴びてないの。勝手に寝ろって言われても困る」


私は言いながら、シャワールームに踏み込むと、お湯を浴びるより先に葦原くんに抱きついた。
素肌の密着なんて、もう何度も経験しているのに、場所が変わった途端、猛烈に緊張した。