ここ二週間、葦原くんの命令で、私は自宅マンションには戻らず、彼の部屋に居候しているかたちだ。

さすがにボストンバッグひとつでは荷物が足りないけれど、葦原くんは私を自宅にひとりで帰すことを嫌がり、必要なものは惜し気もなく買ってくれる。
彼に資産があるというのは本当らしく、私は買い与えられる有名ブランドの靴や通勤服に恐縮するばかりだ。

いつかお金を返すとは言っているけれど、「所有物を飾るのは主人の仕事ですから」と取り合ってくれない。


葦原くんは優しい。
そしてどうしようもなく孤独な人だ。

彼はこんなかたちでしか、繋がれない。
それが私にはわかりかけている。

葦原くんは、私に愛しているなどと言われたらどうするのだろうか。

一気に興味が失せて、私を放り出すだろうか。

想像しただけで、身震いした。葦原くんの腕なしじゃ、私は生きていけない。
たとえ、これがかりそめの平穏でも、今はこれにすがりたい。

葦原くんには絶対知られてはいけない、私の恋。

このまま消えてなくなってしまうまで、胸の奥に押し込めておこう。