同時に感じるのは、葦原くんの征服欲、支配欲は日を追うごとに強くなっているということだ。

優しく抱きしめてくれたと思ったら、急に私を罵る。言葉で責め、身体で責め、限界で許しを請うても離してくれない。
そういった事態が何度かに一回の逢瀬で必ずある。

彼自身、そんな自分を持て余しているようだった。

手ひどく私を抱いた後は、いつもひとりでソファに移動し丸まって眠ってしまう。

葦原くんは苦しいのかもしれない。
自分の生き方が。支配しないと安心できない歪んだ心根が。

私にできることはなんだろう。



通路を通り、改札へ向かう。
ここからは逆方向だ。


「それじゃ、また」


葦原くんに別れを告げようとした。その時だ。


「沙都子!その男か」


いきなり、怒声を浴びせられ、私たちは声の方に顔を向ける。

私と葦原くんの間に割って入ってきたのは兄の修平だ。

それは、背筋が震えるほどの驚愕だった。

なぜ、こんなところにいるのだろう。
今は平日の午前中で、兄は仕事をしていなければならない時間帯だ。