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二子玉川駅にたどり着くと、改札に葦原くんが来ていた。
スーツではない。コートにスリムタイプのチノパンだ。
帰宅していたのにわざわざ迎えに来てくれたのだと気づき、安堵でへたり込みそうになった。
「今日は帰ったと思ってましたが、どうしたんですか?真っ青ですよ」
思いのほか、気を張っていたようで、葦原くんの顔を見た瞬間から手が震えだした。
私は差し出された彼の手をとって、深く息をついた。
「ありがとう。助かる」
「そうじゃなくて、どうしたんですか?って聞いてるんです」
葦原くんの部屋に向かう道すがら、私は兄と遭遇したことをぽつりぽつりと話した。
最近連絡が多いこと、今日は急に家の近くに現れたこと。
話を聞きながら、葦原くんは渋い顔をしていた。
「前も思ったんですが、沙都子さんのお兄さんはあきらかにあなたを性愛の対象としていますよね」
その言葉にぎくりとし、すぐに彼に隠してもしょうがないと考える。
葦原くんほど察しがよければ、私の説明と以前見た光景で、充分兄の異常さに気づくだろう。